深刻なおからの問題
産業廃棄物となるおから
大豆から豆腐を製造する際、おからが出ることは一般的に知られていますが、その量がどれほどかご存じでしょうか?
実は、原料の大豆量を上回る量のおからが排出されます。おからは決して悪いものではありませんが、その95%は産業廃棄物として処理されているのが実情です。処分するには費用がかかる上、大量の化石燃料を使い、二酸化炭素を排出するなど、環境にも負荷をかけています。おからは豆腐屋さんにとって、頭の痛い問題になっています。
開発までの道のり
これまでにない豆腐づくりに挑戦
「将来、おからの問題はもっと深刻化するから、おからの出ない豆腐づくりの研究をしなさい」。
1990年頃、株式会社味の素の中央研究所所長として活躍された奥村信二農学博士との出会いが、大豆まるごと豆腐を開発するきっかけでした。将来の豆腐産業を見据えた奥村氏より鋭いアドバイスをいただいたことから、私たちの研究はスタートしました。
しかし、私たちは豆腐機器メーカーにすぎず、当時は専属の研究員も十分な実験機器をそろえる余裕もありません。それでも何とか研究を続けたものの、機械屋だけの研究には限界がありました。
その後、縁あってベンチャーの豆腐屋さんと共同で研究することが決まりました。機械屋と豆腐屋という補完的な立場で研究を進めると、そのスピードは一気に加速。何度も改良を重ね、試食会、実演販売などを積極的に開催し、お客様の声を聞くことに徹しました。そうすることで、「豆腐もどき」の製法から「大豆まるごとらしさ」を求めた製法へ、発想の転換をすることができたのです。
そして1999年、大豆まるごと豆腐製造装置「ファミリープラント」を開発し、本格的な販売を開始しました。開発着手から約10年後のことです。
ノウハウを結集した微粉砕技術
気流式粉砕機
大豆まるごと豆腐の原料は、大豆を生のまま超微粉砕したパウダーです(ロハソイパウダー)。独自のノウハウを搭載した気流式粉砕機で加工すると、粒の形状が丸く、粒度も細かくそろい、ロットによるばらつきもほとんどない安定したパウダーができ上がります。風味や凝固性を損なわないよう熱変性を抑えるなど、さまざまな工夫もプラス。添加物を一切使用せず、生の大豆をnm単位まで粉砕することができます。この大豆パウダーを使用することで、従来の豆腐製造工程を大幅に短縮する画期的な製法が誕生。その上、おからを排出せず、大豆が持っている本来の栄養を余すことなく引き出す豆腐づくりが可能となりました。
パイオニアとしてさまざまな賞を受賞
新しい価値を生む製品としての確かな証
業界初のおから無排出化に取り組んだ私たちは、その後も研究改良を重ね、大豆まるごと豆腐・豆乳の普及に努めてきました。現在では、国内のみに留まらず海外での開業希望者も出てきており、その知名度は徐々に高まってきています。このパイオニアとしての取り組みが評価され、2006年には「日本環境経営大賞」、2009年には「元気なモノ作り中小企業300社2009」「第39回食品産業技術功労賞」を受賞しました。
期的な製法を確立
省資源・環境保全・省力簡易作業を実現
大豆まるごと豆腐が「画期的」と言われる理由のひとつは、製造工程の圧倒的な簡略化にあります。従来の製法にかかる時間と比較してみれば一目瞭然。独自のノウハウにより、誰でもおいしい豆腐を作ることができます。また、もうひとつの大きな特徴は、受注生産が可能になったということ。これまでは、大豆の前加工に時間がかかるため1日の生産量は決まってしまっていました。しかし、新製法は豆乳の工程から製品完成までの時間が圧倒的に短いため、受注に対しフレキシブルに対応することができ、エンドユーザーであるお客様にいつでもできたての新鮮な豆腐を提供できるというメリットを有しています。
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