マルニュートリション(栄養不良)への対応 ― 大豆の力で健康課題に挑む
現代の食生活はかつてないほど豊かになった一方で、ジャンクフードの増加や食の欧米化による栄養の偏りが大きな問題となっています。特に日本では、「マルニュートリション(過不足型栄養不良)」が静かに広がり、脂質異常や食物繊維不足など、健康を脅かすリスクが年々高まっています。
約3人に1人が「中性脂肪高め」 ― 脂質異常の現状

日本人の約3人に1人は中性脂肪が高めで、特に50歳以上ではその割合がさらに増加しています。中性脂肪値そのものは即座に健康に影響するものではありませんが、増加することで血中の脂質バランスが崩れ、生活習慣病などのリスクが上昇します。
糖質・脂質の過剰摂取や運動不足などにより、一度崩れたバランスは中高年になるほど回復しにくくなるのが現実です。
注目される大豆の力 ― βコングリシニンの働き
大豆は、昔から日本人の健康を支えてきた良質なたんぱく源です。近年、京都大学の鬼頭誠名誉教授らの研究により、大豆たんぱく質の一種である「βコングリシニン」に中性脂肪を下げる効果があることが発見され、世界で初めて報告されました。
βコングリシニンの3つの働き
- 代謝促進:肝臓で中性脂肪をエネルギーに変換し、脂肪酸を減少
- 合成抑制:脂肪酸の減少により新たな中性脂肪の合成を抑える
- 吸収阻害:小腸での吸収を抑制し、糞中に排泄させる
ただし、通常の大豆に含まれるβコングリシニンは5~7%程度と少なく、効果を得るには豆腐3丁、または豆乳1L以上が必要とされます。
機能性大豆で「脂質代謝バランス」の正常化を支援 ― 共同研究による科学的アプローチ
私たちは、農研機構が主導する「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」に参画し、脂質代謝の改善効果を持つ大豆の栽培・加工技術の開発に取り組んでいます。
本プロジェクトは、近畿大学、北海道情報大学、長野県野菜花き試験場などとともに、当社も共同研究機関として参画し、以下のような成果を上げています。
高機能性大豆「β-コングリシニン高含有大豆」の開発
私たちは、通常の約2倍以上のβ-コングリシニンを含有する大豆「ななほまれ」の栽培技術と、その成分を効率的に摂取できる食品加工技術を確立しました。これにより、より少量で効果が期待できる機能性大豆食品の実用化が実現しています。
科学的に証明された“正常化”の効果
中性脂肪が高い状態が続くと、血中脂質バランスが崩れ、動脈硬化や心疾患など生活習慣病のリスクが高まります。しかし、脂質を過剰に下げすぎることも健康には好ましくありません。
本研究では、以下のような成果が確認されました
- 中性脂肪値が高いグループでは、β-コングリシニン摂取により有意な低下が見られた
- 正常値のグループでは大きな変化がなく、必要以上に下げない安全性が確認された
つまり、β-コングリシニンは「中性脂肪を無理に下げる」のではなく「本来の正常値に近づける」作用があることが、実証されたのです。
実用化製品:ナナマル大豆飲料
本研究成果をもとに、当社では以下の機能性食品を展開しています。
ナナマル大豆飲料:
高含有大豆「ななほまれ」由来のβ-コングリシニンを200mlで効率摂取。おからゼロ製法により、β-コングリシニンと食物繊維をまるごと摂取
食物繊維不足への対応 ― 「食べて補う」大豆食品
また、現代人に不足しがちな食物繊維にも着目。当社では、1丁(300g)でレタス約2.5個分の食物繊維が摂れる「おからゼロ」の大豆まるごと豆腐を開発。
おからを出さず、大豆のすべての栄養を活かすことで、ヘルシーかつ実用的な食物繊維補給食品として、多くのお客様に支持されています。
実用化製品:おからゼロ大豆まるごと豆腐
大豆製品は、「おいしさ」と「健康」の両立にとどまらず、未来の食と健康課題に応えるソリューションです。
今後もマルニュートリションへの包括的な対応を通じて、健康で持続可能な社会の実現に貢献してまいります。