1フードロスの削減

― 大豆まるごと活用し、おからゼロの世界へ ―

おからの問題
おからの問題

「世の中にない機械は自社でつくる」この精神のもと、自社開発の大豆粉砕機を完成させ、丸大豆を20μm(マイクロメートル)程度に微粉砕する技術を確立。おからが発生しない豆乳・豆腐の製造を可能にしました。
この画期的な製法と粉砕機は、特許も取得、第5回食品産業もったいない大賞も受賞しました。

さらに、私たちの微粉砕技術は、大豆にとどまらずさまざまな農産物や食品原料にも応用可能です。機能性素材の活用や未利用資源の有効活用など、フードロスの削減にも貢献しています。

ミナミ産業株式会社は、テクノロジーの力で「食」の未来を拓き、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

実用化製品:微粉砕機(ミナクロンミル、ミナクロンミルミニ)

粉砕技術の特徴

  • 発熱が少ない
  • シャープな粒度分布
  • 機械構造シンプルで掃除しやすい
  • 応用範囲が広い
超微粉末製造装置「MINACRONE MINI」

2フードウェイストの抑制

― 保存性向上で流通段階の廃棄を防ぐ ―

フードウェイストの抑制と保存性の向上への取り組み

私たちは「食のムダをなくす」ことを重要な社会課題と捉え、独自技術を通じてフードウェイストの削減に取り組んでいます。

UFB(ウルトラファインバブル)とは?

UFB(Ultra Fine Bubble)とは、直径1マイクロメートル未満(1μm以下)の極めて小さな気泡のことを指します。肉眼では見えないほど微細で、水中に長時間安定して存在するという特徴があります。

特徴と効果

  • 長時間水中にとどまる
    ナノサイズの気泡は浮上せずに水中を漂い続け、物質表面に浸透しやすくなります。
  • 高い洗浄力と浸透力
    微細な気泡が食品や素材の微細な凹凸にも入り込み、洗浄や処理の効果を高めます。
  • 酸素や窒素など様々なガスを封入可能
    特定の目的に応じて、酸素・窒素・炭酸ガスなどをUFB化することで、食品の鮮度保持や品質改良に活用できます。

UFBは、持続可能な社会を支える「食×テクノロジー」の鍵となる可能性を秘めています。我々ミナミ産業は独自のUFB発生装置「ミナバブル」を開発し特許を取得しました。この装置を使うと100㎚(ナノメートル)程度の超微細な泡を効率よく発生さえることができます。

UFB発生装置「ミナバブル」
UFB発生装置「ミナバブル」
当社UFB発生装置の粒度解析
当社UFB発生装置の粒度解析

食品分野での活用

当社ではこのUFB技術を食品分野に応用し、以下のような成果を上げています。

豆腐の長期保存技術で流通ロスを削減

従来の豆腐は賞味期限が短く、製造から数日~2週間程度で消費される必要がありました。そのため、流通過程や家庭内での賞味期限切れによる廃棄が発生していました。

私たちはウルトラファインバブル(UFB)技術を活用し、鮮度を保持しながら長期保存可能な豆腐製造技術を開発。これにより、豆腐の流通可能期間を延長し(6か月)、廃棄リスクを大幅に削減することに成功しました。

大豆まるごと豆腐
大豆まるごと豆腐

油脂の酸化抑制技術

食用油分野では、窒素UFB技術を活用し、油の酸化を示す指標であるPOV(過酸化物価)の上昇を抑える技術を開発。

オリーブオイルなどにおいても、開封後のフレッシュ感を長期間維持する保存技術として効果が確認されました。

 UFBによる食用油の酸化抑制効果  EXオリーブ油風味評価

酵素的褐変・黒変の抑制

UFB技術は、食品の変色や劣化防止にも効果を発揮しています。

アボカドなどの酵素的褐変の抑制に成功

アボカドなどの酵素的褐変の抑制

左から①水道水(原水)②脱気水(DO値 0.05 、運転開始15分後)③N2-UFB噴入60分(ガス圧 0.50Mpa) ④:N2UFB噴入60分(ガス圧 1.00Mpa)

生のエビなど甲殻類の黒変(ブラックスポット)防止にも応用

生のエビなど甲殻類の黒変(ブラックスポット)防止
生のエビなど甲殻類の黒変(ブラックスポット)防止
生のエビなど甲殻類の黒変(ブラックスポット)防止

窒素UFB使用した生伊勢海老冷凍事例

その他水産物や果実飲料、野菜など多様な食品への応用研究を企業・研究機関と連携しながらオープンイノベーションで進行中です

このように私たちは、UFB技術を基盤とした食品の保存性向上により、流通段階から家庭まで食品の無駄を減らす「技術による社会貢献」を実現していきます。

3プロテインクライシスへの対応

― 大豆たんぱくで未来の食を支える ―

持続可能な未来のために ― 環境負荷を低減する新しい「食」の提案

近年、畜産業が排出するCO₂などの温室効果ガスは、交通機関に匹敵するレベルとされ、その環境への影響は年々深刻化しています。国際機関の試算では、2050年には全体の約37%を占めるまでに増加する可能性も指摘されています。

一方、植物由来たんぱく質(例:大豆)は、牛肉と比較して1/85の温室効果ガス排出量であり、非常に低い環境負荷で生産可能です。

プロテインクライシスへの対応 ― 私たちの基本的な考え方

私たちは、畜産品や水産品そのものを否定するものではありません

しかし、このまま現在の食料生産・消費の構造が続けば、環境への負荷はさらに高まり、持続可能性が損なわれることは避けられません。

そこで私たちは、以下のようなアプローチで「食のパラダイムシフト」を目指します

  • 限られた動物性たんぱく資源を補完・代替する
    動物性たんぱくに依存しすぎない、環境負荷の少ない植物性たんぱくの活用を推進します。低環境負荷で持続可能な選択肢として、栄養・美味しさ・利便性のバランスを追求したプラントベースフード開発を行っています。
  • 栄養とおいしさの両立
    大豆やその他の植物原料を独自技術で加工し、たんぱく質としての機能性を活かしながら、食感・風味にも妥協しない製品開発を目指しています。
  • ハイブリッド型への挑戦
    完全な代替に加え、動物性と植物性を組み合わせた「ハイブリッド製品」にも注力し、栄養バランス・コスト・味の面で現実的なソリューションを提供します。
    現実的な味覚と栄養ニーズに応えつつ、環境負荷の低減を実現する新たな選択肢を提案します。
  • 地球規模の課題への貢献
    人口増加や気候変動により世界中でたんぱく資源の需給が不安定化する中、日本発の技術で安定供給モデルの構築を目指します

「未来の食」は、今の私たちの選択から始まります。我々ミナミ産業は、食の技術革新を通じて、地球と人にやさしい持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

パリから世界へ ― 豆腐を通じたプラントベースフードの可能性

私たちは2015年、フランス・パリに合弁会社を設立し、豆腐や大豆食品を中心としたプラントベースフードのアトリエ&レストラン「TOFUYA PARIS」を展開しました。
大豆の栄養価の高さと環境負荷の低さを世界に伝える挑戦として、現地での製造・販売を通じて得た経験は、現在の製品開発・輸出事業の大きな礎となっています。

海外での豆腐普及の課題 ―「大豆臭」への対応

日本では当たり前に親しまれている大豆製品ですが、欧米では「大豆特有のにおい」が敬遠されがちです。
このにおいの主な原因は、大豆に含まれるリポキシゲナーゼ(酵素)が酸素と反応して生成するヘキサナールという成分にあります。
また、日本人は豆腐の香りに馴染みがある一方で、スイーツや飲料用途では大豆臭を好まない傾向もあり、用途によって風味の調整が必要です。

私たちの技術とソリューション

当社ではこの課題に対し、窒素UFB(ウルトラファインバブル)技術を活用した独自の大豆処理方法を開発し、大豆臭の低減に成功。現在は特許も取得済みです。
この技術により、風味を抑えながらも栄養価はそのままに、大豆本来の価値を最大限に引き出すことが可能となりました。

大豆ミート窒素UFB処理
大豆ミート窒素UFB処理
UFB大豆臭低減効果
UFB大豆臭低減効果
三重県工業研究所共同研究
三重県工業研究所共同研究

グローバルに展開する製品群

パリでの店舗運営の知見を活かし、私たちは以下のような製品を開発・輸出しています

スイーツ豆腐「豆花ヌーボー」
大豆臭を抑え、欧米でも受け入れられる繊細な味わい。
長期保存可能

豆花ヌーボー

変わり豆腐
大豆と様々な原料を組合わせて創作の変わり豆腐。
長期保存可能

変わり豆腐

大豆由来のミート代替製品
高たんぱく・低環境負荷のサステナブルな選択肢
海外向け冷めてもおいしい大豆からあげやビーガンハンバーグなど開発にも取組んでいます。

大豆臭低減唐揚げ

コロナなどの影響もありパリの法人は閉鎖し「TOFUYA  PARIS」での挑戦は終わりましたが、現在でもリッツカールトンをはじめ多くの店舗に大豆製品を輸出しています。その経験は今も私たちのグローバルな商品開発と技術革新の原動力となっています。

今後も「日本の大豆文化×テクノロジー」で、世界に新たな食の価値を提供してまいります。

4マルニュートリション(栄養不良)への対応

― 食事で健康を整える、サプリに頼らない栄養提案 ―

マルニュートリション(栄養不良)への対応 ― 大豆の力で健康課題に挑む

現代の食生活はかつてないほど豊かになった一方で、ジャンクフードの増加や食の欧米化による栄養の偏りが大きな問題となっています。特に日本では、「マルニュートリション(過不足型栄養不良)」が静かに広がり、脂質異常や食物繊維不足など、健康を脅かすリスクが年々高まっています。

約3人に1人が「中性脂肪高め」 ― 脂質異常の現状

日本の脂質異常分布 

日本人の約3人に1人は中性脂肪が高めで、特に50歳以上ではその割合がさらに増加しています。中性脂肪値そのものは即座に健康に影響するものではありませんが、増加することで血中の脂質バランスが崩れ、生活習慣病などのリスクが上昇します。

糖質・脂質の過剰摂取や運動不足などにより、一度崩れたバランスは中高年になるほど回復しにくくなるのが現実です。

注目される大豆の力 ― βコングリシニンの働き

大豆は、昔から日本人の健康を支えてきた良質なたんぱく源です。近年、京都大学の鬼頭誠名誉教授らの研究により、大豆たんぱく質の一種である「βコングリシニン」に中性脂肪を下げる効果があることが発見され、世界で初めて報告されました。

βコングリシニンの3つの働き

  • 代謝促進:肝臓で中性脂肪をエネルギーに変換し、脂肪酸を減少
  • 合成抑制:脂肪酸の減少により新たな中性脂肪の合成を抑える
  • 吸収阻害:小腸での吸収を抑制し、糞中に排泄させる

ただし、通常の大豆に含まれるβコングリシニンは5~7%程度と少なく、効果を得るには豆腐3丁、または豆乳1L以上が必要とされます。

機能性大豆で「脂質代謝バランス」の正常化を支援 ― 共同研究による科学的アプローチ

私たちは、農研機構が主導する「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」に参画し、脂質代謝の改善効果を持つ大豆の栽培・加工技術の開発に取り組んでいます。
本プロジェクトは、近畿大学、北海道情報大学、長野県野菜花き試験場などとともに、当社も共同研究機関として参画し、以下のような成果を上げています。

高機能性大豆「β-コングリシニン高含有大豆」の開発

私たちは、通常の約2倍以上のβ-コングリシニンを含有する大豆「ななほまれ」の栽培技術と、その成分を効率的に摂取できる食品加工技術を確立しました。これにより、より少量で効果が期待できる機能性大豆食品の実用化が実現しています。

科学的に証明された“正常化”の効果

中性脂肪が高い状態が続くと、血中脂質バランスが崩れ、動脈硬化や心疾患など生活習慣病のリスクが高まります。しかし、脂質を過剰に下げすぎることも健康には好ましくありません。
本研究では、以下のような成果が確認されました

  • 中性脂肪値が高いグループでは、β-コングリシニン摂取により有意な低下が見られた
  • 正常値のグループでは大きな変化がなく、必要以上に下げない安全性が確認された

つまり、β-コングリシニンは「中性脂肪を無理に下げる」のではなく「本来の正常値に近づける」作用があることが、実証されたのです。

実用化製品:ナナマル大豆飲料

本研究成果をもとに、当社では以下の機能性食品を展開しています。
ナナマル大豆飲料:
高含有大豆「ななほまれ」由来のβ-コングリシニンを200mlで効率摂取。おからゼロ製法により、β-コングリシニンと食物繊維をまるごと摂取

βコングリシニン5gの摂取目安
ナナマル大豆飲料

食物繊維不足への対応 ― 「食べて補う」大豆食品

また、現代人に不足しがちな食物繊維にも着目。当社では、1丁(300g)でレタス約2.5個分の食物繊維が摂れる「おからゼロ」の大豆まるごと豆腐を開発。
おからを出さず、大豆のすべての栄養を活かすことで、ヘルシーかつ実用的な食物繊維補給食品として、多くのお客様に支持されています。

実用化製品:おからゼロ大豆まるごと豆腐

WHOLE BEANS TOFU

大豆製品は、「おいしさ」と「健康」の両立にとどまらず、未来の食と健康課題に応えるソリューションです。
今後もマルニュートリションへの包括的な対応を通じて、健康で持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

5フェムテックへの貢献

― 女性の健康とライフステージを食で支える ―

大豆の力で女性の健康をサポート

私たちは、女性特有の健康課題に寄り添うフェムテック(女性の健康課題をテクノロジーで解決する取り組み)の一環として、大豆の機能性成分を活かした製品開発に取り組んでいます。

 妊娠期にやさしい「カフェインレス大豆珈琲」

妊婦さんやカフェインを控えたい女性に向けて、大豆を焙煎して作ったカフェインレスの「大豆珈琲」を開発。
やさしい風味で、身体をいたわりながらホッと一息つける時間を提供します。

大豆を焙煎して作ったカフェインレスの「大豆珈琲」

イソフラボンリッチな「大豆胚芽パウダー」

女性ホルモンに似た働きを持つ大豆イソフラボンに注目し、特にイソフラボン含有量の多い大豆の胚軸部を原料にした「イソフラボンリッチパウダー」を開発。
年齢に応じた女性のゆらぎに寄り添い、ホルモンバランスの整えを食から支援します

イソフラボン含有量の多い大豆の胚軸部
イソフラボンリッチパウダー

大豆まるごと豆腐で骨密度対策

当社独自の「おからゼロ・大豆まるごと製法」により、大豆の栄養を余すことなく取り入れた「大豆まるごと豆腐」は、骨密度の増加効果が確認されており、骨粗しょう症対策にも期待されています。
高たんぱく・低糖質・高食物繊維で、健康維持に最適な日常食として支持されています。

大豆まるごと豆腐の骨密度に対する研究について
オカラ無排出豆腐を用いてヒトに対して各種身体計測並びに24時間尿中Na,K排出量について、動物に対して血圧の変化、脳血流量に対する有効性について調べ、左側が骨密度、右側がNa/K比率を示しています。骨密度は介入前の平均値31.9±4.3%から介入後の平均値は34.2±3.9となり統計学的に有意な増加を示しました。
また、24時間尿中から換算した被験者のNa/K摂取比率は介入前の平均値は3.54±1.18から介入後の平均値2.19±0.72となり統計学的に有意な減少を示しました。

大豆まるごと豆腐の骨密度に対する研究
大豆まるごと豆腐の骨密度に対する研究

「女性の健康とライフステージに寄り添う食のかたち」を追求し、私たちはフェムテック視点でのプラントベース製品の開発をこれからも進めてまいります。

6地域活性化の推進

― 技術と連携で地域の力を世界へ ―

社会課題解決に向けた地域活性化への取り組み

私たちは、地域資源の価値を引き出し、持続可能なまちづくりを支えることを使命とし、技術と伝統を融合させた製品開発・地域連携に取り組んでいます。

 地域の伝統工芸 × 食のイノベーション

三重県の伝統工芸である万古焼(ばんこやき)を活用し、海外でも使用可能な豆腐製造専用鍋「萬来鍋」を開発。
また、常温で長期保存できる「ロングライフ豆乳」との組み合わせにより、水と熱源さえあれば世界中どこでも豆腐が作れるシステムを実現しました。
これにより、日本食文化の普及とともに、すでに30カ国以上への輸出実績を持ち、地域発の製品がグローバルに展開されています。

萬来鍋による豆腐作り(シンガポール)
萬来鍋による豆腐作り
(シンガポール)
フレンチ採用事例(パリ)
フレンチ採用事例
(パリ)
よせ豆腐(NY)
よせ豆腐
(NY)
創作豆腐(サンフランシスコ)
創作豆腐
(サンフランシスコ)

地域連携プロジェクト「マメマチ」推進

さらに、三重県東員町と連携して「マメマチプロジェクト」を推進。
地元産大豆を活用した商品開発や、地域の魅力を伝える体験型イベント・食育活動・観光資源との連携を通じて、地域内外の人と資源が循環する持続的なまちづくりに貢献しています。

三重県東員町と連携「マメマチプロジェクト」
三重県東員町と連携「マメマチプロジェクト」
第6回ディスカバー農山漁村の宝(農林水産省)を受賞
第6回ディスカバー農山漁村の宝(農林水産省)を受賞

7高齢化社会への対応

― 高齢者の健康と日常を食で守る ―

高齢化社会への対応 ― 食を通じて健やかな長寿を支える

日本をはじめ世界各国で進む高齢化社会において、加齢に伴う健康課題や食の制限に対する対応は、重要な社会的テーマとなっています。
私たちは、咀嚼や嚥下に配慮した製品や、栄養補助のための機能性とおいしさを両立させた食品の研究・開発・提供を通じて、高齢者の豊かな食生活を支援しています。

大豆の力で高たんぱく・やさしい食事を

特に、大豆を活用した豆腐様食品や高たんぱくなプラントベース食品の開発に力を入れ、咀嚼が困難な方でも食べやすいやわらかさと、十分な栄養補給が可能な設計としています。
高齢者向けの給食・介護食市場への展開に加え、国内外への販路拡大を進め、健康長寿を支える食品として高い評価を得ています。

大豆の力で高たんぱく・やさしい食事を「そのまんま大豆粉」

「すべての人にやさしい食」を。

私たちは、高齢社会の課題に“おいしさと機能性”で応える企業として、これからも製品開発と社会貢献に取り組んでまいります。